日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
最近12年間に東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科において検出された肺炎球菌の薬剤感受性の現状
北谷 栞角田 梨紗子香取 幸夫
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2024 年 4 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

はじめに:近年,肺炎球菌の薬剤感受性の低下や,肺炎球菌ワクチン導入に伴う血清型の置換が問題になっている。今回我々は,当科で最近12年間に検出された肺炎球菌の薬剤感受性の現状に関する検討を行った。

方法:2010年2月から2022年9月までの12年間に,東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の培養検査で検出された肺炎球菌の薬剤感受性と患者の臨床的特徴に関して,後方視的な検討を行った。

結果:検討期間中に当科で検出された肺炎球菌対象株は計89株(小児由来:25株,成人由来:64株)であり,ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)の割合は,小児由来株と成人由来株で概ね同程度であった(各々8.0%,9.4%)。penicillin G(PCG)の感受性は,小児分離株では2014年から2017年にかけて比較的良好であったものの,2018年から2022年にかけてはPRSPとペニシリン低感受性肺炎球菌の割合の増加が目立った。一方で,成人分離株は,2018年から2022年にかけてPRSPの割合は増えているものの,ペニシリン感受性肺炎球菌が過半数を占めるという結果であった。また,meropenem(MEPM)低感受性株の割合は,小児分離株と成人分離株の両者において,2018年から2022年にかけて増加傾向であった。

考察:当科の肺炎球菌小児分離株では,PCGの感受性は近年再度増悪傾向であり,MEPM低感受性株の割合も増加傾向であった。今後も肺炎球菌の薬剤感受性の継続的モニタリングが必要と考えられる。

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