2025 年 5 巻 1 号 p. 15-20
再発・転移性頭頸部扁平上皮癌(recurrent/metastatic squamous cell carcinoma of the head and neck: R/M SCCHN)に対する薬物療法は,免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きく変化した。免疫チェックポイント阻害薬は,過剰な免疫応答を抑制する役割を持つ免疫チェックポイント分子の抑制シグナルを解除することで細胞障害性Tリンパ球を活性化させ効果を得るものである。ただし,免疫チェックポイント阻害薬のみの奏効率は低く,奏効を得るまでの期間も長いという問題がある。現在本邦でR/M SCCHNに対する薬物治療として承認されているのは抗ヒトProgrammed cell Death 1(PD-1)モノクローナル抗体であるニボルマブとペムブロリズマブである。プラチナ製剤抵抗性R/M SCCHN患者に対して用いられるニボルマブは単剤での投与のみが認められており,病勢が強い,あるいは腫瘍量が大きい症例では奏効率を期待して殺細胞性抗がん薬や分子標的薬を含むレジメンを考慮する必要が生じる。化学療法未施行もしくはプラチナ製剤感受性R/M SCCHN症例に対するレジメンには従来の標準治療であるEXTREMEレジメンに加え,ペムブロリズマブ単剤,ペムブロリズマブ+化学療法があり,KEYNOTE-048試験の際に治療効果予測バイオマーカーとして用いられたPD ligand 1 combined positive score(CPS)の値などを踏まえてレジメン選択がなされる。これらの免疫チェックポイント阻害薬が奏効しない場合でも,その後の薬物治療で高い腫瘍縮小効果が得られることは実臨床で経験するところである。本稿でR/M SCCHN患者の予後延長を目的とした,これらの薬剤の使い分けについて触れる。