日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
総説
臨床業務と基礎研究の両立を目指して:時間創出と段階的アプローチの重要性
津田 武
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2025 年 5 巻 3 号 p. 181-184

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抄録

臨床と研究の両立は多くの医師が直面する課題であり,いかに研究活動を継続・発展させるかは大きなテーマである。本稿では,臨床と研究を両立するために重要な三つの視点,すなわち「時間の捻出」「段階的アプローチ」「人的リソースの確保」について概説する。限られた時間の中で研究に取り組むには,臨床業務の効率化による時間の創出が不可欠である。多忙な業務の中で,電子カルテのテンプレート化,情報共有の簡略化,デジタルツールの活用などを通じて診療の生産性を高める工夫が求められる。また研究への取り組みは段階的に進めることが現実的かつ有効である。臨床研究では,まず症例報告や後方視的研究から始め,徐々に前向きかつ大規模な研究へと発展させていく道筋がある。基礎研究においても,ウェットとドライの両手法があり,それぞれに長所と制約が存在するため,両者を組み合わせて活用することが,より実用的かつ質の高い成果につながる。最後に,研究活動を継続・発展させるには人的リソースの確保が不可欠である。医局内や指導者との関係を軸とした「縦のネットワーク」は技術継承や日常的な支援に有効であり,学会・セミナー等を通じた施設横断的な「横のネットワーク」は新たな知見や共同研究のきっかけとなる。こうしたネットワークを構築することは,研究の持続性と広がりの両面に寄与する。

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© 2025 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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