抄録
本研究は,トンネル構造物のアセットマネジメントの中枢を成す維持管理手法の提案を目的としている.そのためには,性能や機能低下をモニタリングしながら,適切なタイミングで補修することが重要であるが,劣化過程は複雑で不確実性が伴うために,予測手法は未だ確立されていない.この不確実性の表現は,確率微分方程式によりモデル化する金融工学理論を援用する手法が注目されている.同モデルの適用のもとに,点検・補修費用を考慮したライフサイクルコストを算出し,最適な点検間隔および補修を行う指標を求め,補修のタイミングを意志決定する手法を提案することによって,戦略的な維持管理計画の立案を目指すものである.