耳鼻と臨床
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原著
半規管瘻孔症例の臨床的検討
品田 恵梨子鈴木 衞河口 幸江西山 信宏萩原 晃小川 恭生河野 淳
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2010 年 56 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
半規管瘻孔は真珠腫性中耳炎の合併症の一つであり、手術症例の約 10%に認められると報告されている。内耳の開放は術後の骨導閾値を上昇させることがあると考えられていたが、病変の郭清によって術後に骨導闘値が低下したという報告もある。今回われわれは真珠腫性中耳炎で半規管瘻孔がみられた症例について検討した。対象は 1997 年から 2009 年までの 12 年間に東京医科大学病院耳鼻咽喉科で手術を施行した真珠腫性中耳炎症例のうち半規管瘻孔が観察された 19 例 19 耳である。初診時の主訴はめまいが最も多く、約半数を占めていた。ついで難聴、耳閉が 32%、耳漏が 21%であった。瘻孔症状があったのは 37%であった。瘻孔の大きさは 2 mm 以下を小瘻孔、それより大きいものを大瘻孔に分けると、大多数が大瘻孔であった。瘻孔の場所は大半が外側半規管であったが、後半規管の瘻孔が 1 耳あった。術前の気導聴力は 3 分法平均で 72.5 dB、骨導は 3 分法平均で 37.4 dB であった。瘻孔の大きさと聴力には関連はなかった。術後に骨導聴力が 10 dB以上改善した症例は 3 耳あり、うち 1 耳は 15 dB以上の改善であった。骨導が著明に悪化した症例はなかった。また、術後全例でめまいは改善した。
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© 2010 耳鼻と臨床会
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