抄録
外傷性鼓膜穿孔が伝音障害に及ぼす影響については既に報告した。今回、慢性中耳炎を対象として、鼓膜穿孔が伝音障害に及ぼす影響について検討した。対象は、鼓室形成術 I 型を施行された慢性中耳炎 29 例とした。鼓膜穿孔面積は穿孔面積率として、穿孔の長径は穿孔長経比として計算し、伝音障害の評価には術前後の気導聴力差を用いた。さらに穿孔面積が伝音障害に及ぼす影響を検討すべく伝音障害指数を算出し、穿孔の形状、穿孔の部位、ツチ骨への干渉の有無に分けて比較検討した。鼓膜に穿孔が生じた場合、低音域ほど伝音障害が有意に大きくなり、外傷性鼓膜穿孔と比較して慢性中耳炎においては低音域の伝音障害がさらに大きい結果となった。円形の穿孔では伝音障害に及ぼす影響が有意に小さい結果となった。前下象限における穿孔では伝音障害の程度が有意に大きい結果となった。