日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
障害児・者における丸飲みの改善を目的とした訓練方法の新たな試み
林 佐智代遠藤 眞美三枝 優子野本 たかと
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2020 年 24 巻 1 号 p. 56-63

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抄録

【緒言】発達期の障害児・者の丸飲みなどの咀嚼機能障害は,食物特性に対する感覚処理の未学習や誤学習によることが多い.そこで,今回,丸飲みをする児に対して,咀嚼する食物と丸飲みする食物を組み合わせることによって,咀嚼する食物の種類を増やす訓練法を考案した.

【対象】12歳4カ月のDown症候群の女児であった.食事中に時々詰まった様子で苦しがり,むせ込むことがあることを主訴に来院した.食事形態は特別支援学校では後期食,自宅では普通食を一口大にきざんだ物であった.

【経過】初診時において,持参した食物は一口大の普通食であり,口唇閉鎖不全による食べこぼしとすべての食物で丸飲みを認めたため,捕食訓練と前歯咬断訓練を保護者に指導した.その後,同様の指導およびスルメによる咀嚼訓練を行ったところ,「カリカリ」「パリパリ」する食感の食物で咀嚼の動きが認められるようになった.しかし,軟らかい食物では改善が認められなかったため,誤学習が丸飲みの原因と判断し,漬物と米飯,きゅうりとハンバーグなどの咀嚼する食物と丸飲みする食物を組み合わせることで咀嚼を促し,同時に丸飲みする食物の硬さや音,味を感受させ,感覚処理を再学習させることを目的に前歯咬断訓練を行った.これにより,丸飲みする食物単体でも咀嚼が認められるようなり,繰り返し行うことによって多くの食物で咀嚼を認めるようになった.

【結論】発達期の障害児・者における丸飲みに対し,咀嚼する食物と丸飲みする食物を組み合わせることで,咀嚼する食物の種類を増やすことができた.食物の組み合わせによる前歯咬断訓練は,誤学習による改善困難な丸飲みへの訓練法として有効なことが示唆された.

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© 2020 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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