抄録
脂肪腫は全身に発生し得る良性腫瘍として複数科領域にわたりみられる疾患である。今回、われわれは頸部に発生した巨大脂肪腫を経験したので報告する。症例は 57 歳の男性である。2003 年に腫瘍を自覚し経過観察を行っていたが、経年変化とともに腫瘍が徐々
に増大した。福岡大学病院耳鼻咽喉科初診時、左頸部の腫瘍は 15 × 10 cm 大で弾性軟、可動性を有していた。また、MRI ではT1・T2 強調像で高信号を呈し、脂肪抑制を認める周囲と境界明瞭であり脂肪腫が最も疑われたが、一部に不均一に描出される部分を持ち脂肪肉腫も否定できなかった。術中所見ではほとんどの領域で周囲との癒着は認めなかったが、左鎖骨窩では周囲組織との瘢痕形成がみられた。また、術前評価として行った 3D-CT angiography が有用で腫瘍の範囲や鎖骨との位置関係および鎖骨下動脈から分枝する栄養血管などが立体的に描出され、病変の局在と形状を可視化することが可能であった。摘出腫瘍は黄色、弾性軟で 18 × 10 × 5 cm で病理学的検査においても脂肪腫と診断された。現在、術後 1 年経過しているが再発徴候を認めない