耳鼻と臨床
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I. 頭頸部癌治療における分子標的薬の役割
海外の phase III 試験から頭頸部悪性腫瘍に対する分子標的薬の意義を考える
久保田 彰
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2012 年 58 巻 Suppl.1 号 p. S16-S26

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抄録

頭頸部扁平上皮癌では高率に EGFR の発現を認め、予後不良因子とされている。EGFR の monoclonal 抗体である cetuximab は、再発あるいは遠隔転移で根治治療が困難な症例において cisplatin/5-FU との併用で、あるいは一次治療における放射線との同時併用が生存期間を延長したことから、頭頸部扁平上皮癌の標準的治療として採択された唯一の分子標的治療である。しかし cetuximab と放射線の同時併用の有効性は、subgroup 解析で中咽頭癌、米国内治療に限られることが示唆されたことから、今後さらに症例を重ねて解決しなければならない課題を抱えている。cetuximab 以外に phase III試験で primary endpoint を達成した分子標的薬はなく、分子標的薬が頭頸部扁平上皮癌に対する従来の治療法を凌駕するまでには至っていない。それに対して cytotoxic T cell antigen 4 の抑性剤である ipilimumab、BRAF mutation の抑性剤である vemurafenib は、悪性黒色腫の生存期間を延長したことから標準治療薬に採択された。今後従来の標準治療より頭頸部癌の生存期間を延長し quality of lifeを改善する多くの分子標的薬の登場が期待される。

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© 2012 耳鼻と臨床会
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