耳鼻と臨床
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II. 切除可能 T3、T4 上顎洞扁平上皮癌における手術の位置付け — 当院における治療戦略 —
上顎扁平上皮癌 T4 に対する前中頭蓋底一塊切除
藤本 保志藤井 正純亀井 譲八木 俊路朗斎藤 清平松 真理子西尾 直樹丸尾 貴志中島 務
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2012 年 58 巻 Suppl.1 号 p. S57-S63

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抄録

上顎扁平上皮癌 T4 における頭蓋顎顔面一塊切除の手術成績を検討した。1990 年から 2011 年までの 21 年間で 34 例の前中頭蓋底合併切除を行った。全 34 例の 5 年粗生存率、5年無再発生存率はそれぞれ60.3%、43.7%であった。再発例、断端陽性例では有意に生存率が低下した。T4a とT4bの比較では 5 年粗生存率、5 年無再発生存率ともに有意差を認めなかった。一方で、海綿静脈洞合併切除を伴う切除は 5 年生存を得られず、合併症も術後脳梗塞を含む重篤なものがみられることから、現在は手術適応としていない。海綿静脈洞浸潤例を除く現在の手術適応で検討すると、5 年粗生存率は 72.1%、5 年無再発生存率は 47.7%である。前中頭蓋底合併切除術は側頭下窩や眼窩尖端に浸潤した上顎扁平上皮癌 T4 症例に対して、有効な治療法である。

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© 2012 耳鼻と臨床会
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