抄録
放線菌症は、口腔内常在菌である主に Actinomyces israelii による感染症であり、慢性型の肉芽腫性病変を呈する場合、腫瘍に似た臨床像を呈することがある。頭頸部は好発部位とされるが、舌扁桃に発生したものは少なく、報告例もほとんどない。今回われわれは、舌扁桃に発生した放線菌症の 1 例を経験したので報告する。右舌根部の隆起性病変と、右頸部リンパ節腫脹を認め、当初は中咽頭癌を疑い、生検を複数回施行したものの診断がつかなかったため、全身麻酔下に再度生検と右頸部リンパ節摘出術を施行し、放線菌症の診断となった。ペニシリン系抗菌薬の大量長期投与を行い、治療経過は良好であった。悪性腫瘍を疑い、生検を行っても診断がつかない場合、鑑別診断の一つとして放線菌症を念頭に置く必要があると思われる。