2015 年 61 巻 4 号 p. 135-139
症例は、28 歳、女性。近医総合病院で細菌性髄膜炎に対し入院。脳槽シンチで髄液漏が疑われ、側頭骨 CT にて右内耳の形態異常を認めた。反復する髄膜炎の原因として内耳形態異常が強く疑われ福岡大学病院耳鼻咽喉科紹介受診。側頭骨 CT にて蝸牛は 1 回転半回転、外側半規管の低形成、内耳道の ballooning を認め、内耳道底(lamina cribrosa)が欠損しており、内耳腔と交通がみられる所見であった。以上より反復する細菌性髄膜炎の原因は内耳形態異常と内耳道底欠損によるものが示唆された。細菌性髄膜炎の再発防止目的に内耳窓閉鎖術を行った。耳後部より採取した軟部組織を塊状にして、一つずつ挿入した。最終的に卵円窓より大きい軟部組織を 2 片挿入することで髄液漏を完全に停止することができた。内耳の充填は、髄液圧で充填材料が前庭窓を圧迫し、より強固に閉鎖されると考えられた。