理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
地域在住高齢者の買い物活動に関連する環境因子
加藤 剛平新井 智之荒井 由美子藤田 博暁
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p. Eb0583

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抄録
【はじめに、目的】 2001年にWHOが国際生活機能分類を採択してから、人を取り巻く環境がその活動や参加に関連する因子として重要であることが提唱されてきた。日本においても、高齢者の外出状況などの活動状況と環境因子の関連についての研究が増加傾向にあるが、地域に在住する高齢者の買い物活動に関連する環境について検討した研究は少ない。本研究の目的は、高齢者の買い物活動と、環境因子、特に地域の環境及び交通環境が関連するのかを明らかにすることである。【方法】 A町に在住し、60歳以上でシルバー人材センターに登録している者のうち、研究に賛同した男性、女性併せて50名を分析対象者とした。アウトカムは買い物活動とし、1)買い物の頻度、2)買い物場所までの移動に手伝いが必要であるか(買い物移動の自立状況)を評価した。買い物の頻度はFrenchay Activity Indexの質問項目を引用し、「どの頻度で買い物をされますか*自分で選んだり購入したりすること、連れて行ってもらっていてもかまいません」と尋ね、4段階(0点:していない~3点:週に1回以上している)で評価した。買い物移動の自立状況は、「買い物をする場所までの移動にどなたかのお手伝いが必要ですか」と尋ね、2段階(0点:いいえ、1点:はい)で評価し、買い物移動自立群と買い物移動非自立群に分けた。環境因子地域の環境及び交通環境はHome And Community Environment(HACE)日本語版における地域移動性得点(5点満点:高いほどバリアがある)と交通得点(5点満点:高いほど整備されている)を用いて評価した。また、基本属性として性別、年齢、身体能力として10m最大歩行時間を評価した。買い物の頻度と地域移動性得点、交通得点、年齢、及び10m最大歩行時間の関係を分析するためにSpearmanの順位相関係数を算出した。買い物の頻度と性別の関係はCramerのV係数を算出し、Fisher の直接確率法を用いて検定した。買い物移動の自立状況と、地域移動性得点、交通得点、年齢、及び10m最大歩行時間の関係を分析するために、買い物移動自立群と買い物移動非自立群間でWilcoxonの順位和検定を用いて比較した。一方、性別との関係はFisher の直接確率法を用いて分析した。統計ソフトはSAS 9.1(SAS Institute Japan社製)を用いた。統計的有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、書面及び口頭で研究の説明を行い、書面にて研究への参加に同意を得た。なお、本研究は、埼玉医科大学保健医療学部の倫理委員会からの承認を得ている。【結果】 対象者の平均年齢±標準偏差は69.9±4.6歳で、女性13名(26%)、男性37名(74%)であった。買い物の頻度の中央値[四分位数範囲]は3[3-3]点で、買い物移動自立群は46名(92%)、買い物移動非自立群は4名(8%)であった。買い物の頻度と環境因子、性別、年齢、10m最大歩行時間との間で有意な相関関係はみられなかった。一方、買い物移動非自立群は買い物移動自立群に比して、有意に地域移動性得点が低く(中央値[四分位数範囲]:1.0[1.0-1.0]点 vs 3.5[1.5-5.0]点,p=0.026)、交通得点が高く(4.0[2.0-5.0]点 vs 1.5[1.0-2.5]点, p=0.022)、男性の割合が多かった(97% vs 77%, p=0.049)。【考察】 地域に在住する高齢者の買い物場所への移動に際し、手伝いが不必要な者は必要な者に比して、地域の環境にバリアが少なく、交通の環境がより整備されていた。このことから、地域在住高齢者を取り巻く地域の環境、交通環境が整備されていることにより、買い物場所への移動が容易になる可能性があることが考えられた。また、より多くの男性が買い物場所への移動に際して手伝いを不必要としていたことから、今後、性差を含めて買い物場所への移動に手伝いが必要であるかを検討する必要があると思われた。一方、地域の環境と交通の環境は地域在住高齢者の買い物の頻度には関連していなかった。本研究対象者における買い物の頻度の中央値と四分位数範囲は、全て満点(3点)であり、天井効果がみられた。地域の環境と交通の環境が地域在住高齢者の買い物の頻度に関連していなかったことに、この天井効果が影響した可能性も考えられ、今後、さらなる検討が必要であると思われた。【理学療法学研究としての意義】 本研究は理学療法士として国際生活機能分類上の環境因子に着目した点で意義がある。[謝辞]本研究は平成23年度文部科学省科学研究費若手研究B(課題番号: 23790578)による。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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