2016 年 62 巻 Suppl.1 号 p. S9-S16
近年、進行中咽頭癌に対する標準治療が手術から化学療法同時併用放射線治療(CCRT)に変わりつつある。しかしながら、これまでに中咽頭癌に対する手術と CCRT を直接比較した報告はなく、今後も新たなランダマイズ試験が行われることは難しいと思われる。そこで本研究では、多施設より収集した中咽頭癌症例 523 例から、matched-pair 解析という手法を用いて背景をそろえた 2 群(手術群と CCRT 群)を抽出し比較検討したところ、無増悪生存率および局所制御率では有意差なく、治療後の嚥下障害に関しては CCRT 群の方が少なかった。また、CCRT 施行例での局所再発率は 20.6%であり、その内の 31.4%に救済手術が施行された。進行中咽頭癌に対する CCRT は手術と同等の治療成績であり、治療後の嚥下機能も優れているが、局所再発した場合の救済率は低いため、慎重な治療方法の選択が必要である。