2018 年 64 巻 5 号 p. 189-196
眼咽頭筋ジストロフィー(oculopharyngeal muscular dystrophy:OPMD)に伴う高度の声帯萎縮による嗄声に対し、甲状軟骨形成術Ⅰ型(TP Ⅰ)とⅢ型(TP Ⅲ)を併用し(TP Ⅰ+Ⅲ)、音声の改善を得た。症例は 68 歳、男性。X − 10 年 OPMD と診断され、X − 7 年嚥下障害に対して右輪状咽頭筋切除術を行い、いったん嚥下機能は改善した。その後も嗄声が進行し、複数回の右声帯内脂肪注入術や右声帯内アテロコラーゲン注入術を行うも音声改善は乏しかった。嚥下機能も次第に悪化し、嚥下機能改善手術の必要性も再度検討されたが本人希望はあくまで音声改善であり、X 年10月局所麻酔下に TP Ⅰ+Ⅲを施行した。術後両側声帯の内方移動が得られ、声門閉鎖不全は残存したが、他覚的な音声検査所見の改善を一部認めた。TP Ⅲの甲状軟骨縦切除が行われた右側の声帯の内方移動が左側に比べて良好であった。高度声帯萎縮に対する音声外科的治療として TP Ⅰ+Ⅲが有用と考えられた。