2020 年 66 巻 2 号 p. 31-34
哺乳類の聴覚機構は、高度の周波数分析能を持っており、現在、その機序は Békésy の基底膜進行波説で説明されている。しかしながら、Békésy は新鮮な cadaver の蝸牛で、前庭階骨壁に観察窓を開け、蓋膜とコルチ器を除去し、露出した基底膜を弛緩させるという改造を加えた蝸牛で実験し、基底膜の進行波を確認していた。本論文では、前庭階壁に開閉できる観察窓を付けた、透明レジン製蝸牛模型を作り実験を行った。閉窓時(正常耳)では、コルチ器・蓋膜の有無とは無関係に、基底膜は振動せず、前庭窓と蝸牛窓は逆位相で振動した。開窓時では、前庭窓と基底膜と観察窓水面が同位相で振動し、蝸牛窓は振動しなかった。結論として、Békésy の基底膜進行波説は、正常蝸牛には適合しないことが確認された。