耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
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66 巻, 2 号
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原著
  • 森満 保
    原稿種別: 原著
    2020 年66 巻2 号 p. 31-34
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

    哺乳類の聴覚機構は、高度の周波数分析能を持っており、現在、その機序は Békésy の基底膜進行波説で説明されている。しかしながら、Békésy は新鮮な cadaver の蝸牛で、前庭階骨壁に観察窓を開け、蓋膜とコルチ器を除去し、露出した基底膜を弛緩させるという改造を加えた蝸牛で実験し、基底膜の進行波を確認していた。本論文では、前庭階壁に開閉できる観察窓を付けた、透明レジン製蝸牛模型を作り実験を行った。閉窓時(正常耳)では、コルチ器・蓋膜の有無とは無関係に、基底膜は振動せず、前庭窓と蝸牛窓は逆位相で振動した。開窓時では、前庭窓と基底膜と観察窓水面が同位相で振動し、蝸牛窓は振動しなかった。結論として、Békésy の基底膜進行波説は、正常蝸牛には適合しないことが確認された。

  • 疇地 里衣, 平川 仁, 池上 太郎, 長谷川 成海, 山下 懐, 安慶名 信也, 上原 貴行, 田中 克典, 上里 迅, 真栄田 裕行, ...
    原稿種別: 原著
    2020 年66 巻2 号 p. 35-40
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

    頭頸部癌の発症と DNA 修復酵素遺伝子多型との相関に関し、いまだ結論は出ていない。われわれは沖縄地域において罹患率の高い下咽頭癌の発症が、DNA 修復酵素遺伝子多型と関連するかを検討した。琉球大学医学部附属病院耳鼻咽喉科を受診した下咽頭癌患者 117 例と非癌疾患の患者 125 例に対し、DNA 修復酵素である ERCC1、XPD312、XPD751、XRCC1 の遺伝子多型の頻度を比較した。結果は下咽頭癌患者と非癌疾患患者との間で各遺伝子多型発現頻度において有意な差はみられなかった。さらに TNM 進行度と遺伝子多型の頻度を比較したところ XRCC1 多型を有する群において遠隔転移は有意に低かった。XPD312、XPD751 に関して欧米諸国と比較したところ変異アレル頻度が低かった。以上より、日本人においてこれらの遺伝子多型は発癌には関連しないが遠隔転移との相関が示唆された。また XPD 遺伝子多型には民族間の差があり、特に沖縄地域では変異アレルの頻度が低い可能性があると考えられた。

症例報告
  • 高良 佳江, 加藤 明子, 福島 淳一, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2020 年66 巻2 号 p. 41-46
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

    川崎病は乳幼児にみられる原因不明の急性熱性疾患で、全身の血管炎を特徴とする。病初期に頸部リンパ節腫脹を来すことが多く、咽後膿瘍類似の臨床所見や画像所見を呈する症例では鑑別に苦慮することがある。今回、咽後膿瘍類似の画像所見を呈した川崎病症例を経験した。症例は 6 歳、女児。発熱、左頸部腫脹・疼痛を主訴に受診し、造影 CT にて咽後部に辺縁の造影効果を伴わない低吸収域を認めた。川崎病の主要症状 5 項目を満たしており、γ グロブリン投与にて速やかに軽快した。川崎病の合併症である冠動脈瘤形成前に速やかな治療を行うために、病初期に造影 CT、さらに可能であれば造影 MRI を撮影し、血液検査所見も参考にして早期診断・治療に繋げることが大切である。

  • 山本 賢吾, 松木 崇, 石井 豊太, 山下 拓
    原稿種別: 症例報告
    2020 年66 巻2 号 p. 47-51
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

    鼻腔異物は日常臨床でしばしば経験されるが、摘出されなかった鼻腔異物は鼻石を形成することがある。今回われわれは本邦では最長と思われる、約 60 年前に挿入されたガーゼを核とした鼻石症を経験したので報告する。症例は 75 歳の男性で症状は特になく、脳梗塞後の嚥下評価目的に当科外来を受診した。嚥下内視鏡検査の際に、総鼻道から下鼻道にかけて鼻石を疑う占拠性病変を認めた。表面麻酔下に外来診察室で摘出を試み、大きな合併症なく摘出できた。鼻石は真菌塊とガーゼと思われる繊維成分を含んでいた。摘出後の問診で約 60 年前に副鼻腔手術を受けていたことが明らかになり、ガーゼはその際に挿入されたものと推測された。病理診断でも繊維成分と真菌を認めた。鼻石摘出後に副鼻腔 CT を撮影したが、遺残ガーゼや鼻石の残存は認められなかった。鼻石症に対しては、鼻腔異物も念頭に置いた問診や診察が肝要と考えられた。

臨床ノート
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