耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
Print ISSN : 0447-7227
ISSN-L : 0447-7227
原著
ステロイド投与を行った神経耳科疾患の B 型肝炎再活性化についての検討
前原 宏基澤津橋 基広梅野 悠太西 龍郎坂田 俊文
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 67 巻 6 号 p. 367-374

詳細
抄録

B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)既往感染者は、免疫抑制薬や化学療法によって HBV が再活性化することがあり、さらに肝炎を発症すれば、時に致死的となる。われわれは、ステロイド投与を行った末梢性顔面神経麻痺および突発性難聴症例(治療開始時に HBs 抗原検査を行った合計 148 例)に対して HBV に関するマーカーの検討を行った。 HBs 抗原陽性は、148 例中 0 例(0 %)だった。HBs 抗体陽性例は、33 例中 12 例(36.4%)、HBc 抗体陽性例は 25 例中 7 例(28.0%)であ った。治療終了後 HBV 再活性化や肝炎発症例は認めなかったが、治療終了後に定期的に検査された症例 8 例中、肝機能の悪化症例が 2 例(25.0%)に見られた。ステロイドの投与期間が 2 週間以上の症例は 47 例(31.8%)、 2 週間未満は、101 例(68.2%)であった。HBV の再活性化はステロイドの投与量より投与期間に大きく依存するとされており、治療に十分な量のステロイドを投与するには、必然的に治療期間が 2 週間を超える可能性が想定される。そのため、ステロイド投与開始時は、HBV スクリーニングとして HBs 抗原、HBs 抗体、HBc 抗体の 3 項目とも測定するべきであると考えられた。

著者関連情報
© 2021 耳鼻と臨床会
前の記事 次の記事
feedback
Top