2022 年 68 巻 3 号 p. 190-195
われわれは、両側急性感音難聴で発症し、入院時血液検査の結果から内耳梅毒と診断した症例を経験した。副腎皮質ステロイド漸減投与を行いながら同時に駆梅治療を行い、難聴は治癒した。頭部単純 MRI 検査(3D-FLAIR 画像)では、治療前に高信号を呈していた内耳は治療後に正常化した。ペニシリンの普及により梅毒罹患数は戦後激減し、日常臨床で遭遇する頻度が少ない疾患となっていたが、近年患者数が増加しており社会問題化している。多臓器に病変が生じ、症状が多彩であるため診断が容易ではなく、また性感染症のため問診に躊躇する場合もある。梅毒による内耳障害はまれではないため、耳鼻咽喉科の日常臨床において注意すべき疾患である。本症例に関して文献的考察を加えて報告する。