耳鼻と臨床
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68 巻, 3 号
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原著
  • 西 龍郎, 梅野 悠太, 武末 淳, 速水 菜帆, 前原 宏基, 澤津橋 基広, 坂田 俊文
    原稿種別: 原著
    2022 年 68 巻 3 号 p. 141-152
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    今回、われわれは問診票を使用し患者希望に沿った抗ヒスタミン薬を処方することで、スギ花粉症患者の治療満足度の向上および症状改善につながるかを、一診療所にて検討した。対象症例は、12 歳以上のスギ花粉症 280 例である。問診票を使用することにより、問診票を使用しなかった前年に比べ、治療満足度の上昇が得られた(治療満足率 87.7%)。 症状改善については、初診群と再診群に分けて検討したところ、花粉飛散ピーク期(p < 0.001)、および花粉飛散後期(p < 0.001)において再診群の方が鼻症状スコア、日常生活支障度いずれも改善を認めた。本検討から問診票を活用することにより患者の治療満足度が向上し、さらに治療効果も得られることが示された。また、再診時の同処方を継続希望の割合は 89.4%であり、初診時に問診票を活用し患者と十分な情報共有が行うことで、COVID-19 パンデミック下で増加したリモート診療の際にも、有用になると考えられた。

  • 佐藤 晋, 澤津橋 基広, 坂田 俊文
    原稿種別: 原著
    2022 年 68 巻 3 号 p. 153-162
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    好酸球性副鼻腔炎に対し、ステロイドを用いた保存的療法の有効性について検討した。保存的治療群(15 例)と内視鏡下副鼻腔手術(ESS)群(22 例)の 2 群に分け、鼻茸スコアの改善度、鼻閉スコアの改善度、嗅覚障害の改善度について後ろ向きに検討し、2 群間の治療結果の比較を行った。保存的治療群において治療前と治療後の鼻茸スコアを比較したところ、左右ともに有意に改善が認められた(p < 0.001)。また、鼻閉スコアも同様に有意に改善が認められた(p < 0.001)。嗅覚障害に対しても保存的療法のみで、15 例中 6 例(40%)に寛解が得られ、8 例(53%)に改善が得られた。保存的治療群と ESS 群の 2 群間には嗅覚障害の改善については治療間の差は認めなかったが、鼻茸スコアと鼻閉スコアは、ESS 群の方が改善度が良好であった。好酸球性副鼻腔炎に対し、ステロイド点鼻、吸入薬の鼻腔呼法、内服を組み合わせることにより、鼻閉や嗅覚障害に対し、保存的治療のみでも治療効果が得られることが示された。

  • 秋定 直樹, 門田 伸也, 青井 二郎, 林 祐志, 髙橋 紗央里, 森田 慎也, 中村 匡孝
    原稿種別: 原著
    2022 年 68 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    凝固第ⅩⅢ因子(以下 F13)は凝固反応の最終段階でフィブリン同士を架橋結合させ機械的な抵抗性をもたらす。F13 が欠乏すると組織の修復が進む前に血栓が溶解されるためいったん止血した半日以降に同部位に出血を来す。F13 は侵襲が大きい手術にて多く消耗されるといわれている。今回われわれは、2012 年から 2020 年までに頭頸部手術後に F13 活性を測定した 16 例の特性を後ろ向きに解析した。16 例のうち 10 例(62.5%)にて F13 活性の低下を認めた。当科で経験した症例においても、手術中の出血量が多い症例にて F13 活性が低下する傾向にあり、F13 活性低下群は 8 例中 4 例で全身麻酔下の再手術を要していた。F13 についての知識は耳鼻咽喉・頭頸部外科医にとって必要不可欠であり、啓発が望まれる。

症例報告
  • 加藤 照幸, 荒井 真木, 山田 大貴, 水田 邦博
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    巨大な鼻口蓋管囊胞に好酸球性副鼻腔炎を合併したまれな症例を経験した。症例は 42 歳、男性。両側鼻閉のため前医より手術目的に当院紹介となった。CT、MRI では、鼻前庭から口蓋部にかけて、最大径 35 mm の境界明瞭な囊胞性病変と、左鼻腔に好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻茸を認めた。内視鏡下鼻内手術を行い、囊胞を鼻腔へ開窓し、左鼻茸を切除し左篩骨洞を開放した。鼻閉は改善し現在までのところ、囊胞や鼻茸の再発は認めていない。

  • 加藤 照幸, 荒井 真木, 山田 大貴, 水田 邦博
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 177-181
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    小児の蝶形骨洞由来の巨大後鼻孔ポリープの症例を経験した。症例は 14 歳、女性。鼻閉、運動時の呼吸苦、嚥下障害のため当科受診となった。鼻内視鏡、CT から蝶形骨洞自然口に基部を有する巨大後鼻孔ポリープと診断した。全身麻酔下に内視鏡下鼻内手術を行い、ポリープを切除し、術後鼻閉、運動時の呼吸苦、嚥下障害は改善した。術後 4 年を経過したが現在のところ再発を認めていない。小児の巨大な後鼻孔ポリープのため手術加療となったが、ポリープの基部が蝶形骨洞自然口にあり、呼吸苦や嚥下困難を伴っていたことが極めてまれであると考えた。

  • 鈴木 智陽, 井口 貴史, 松原 尚子, 小出 彩佳, 佐藤 晋, 梅﨑 俊郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 182-189
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    Ramsay Hunt 症候群は、顔面神経麻痺・第Ⅷ脳神経症状(めまい、耳鳴、難聴)・耳介の帯状疱疹が三主徴である。三主徴のほかに、舌咽神経麻痺や迷走神経麻痺などの多発脳神経障害を来す例も頻度は多くないが、日常診療において散見される。症例は 76 歳の女性。前医で左 Ramsay Hunt 症候群の診断となり、抗生剤、ステロイド点滴治療を受けるも、左高位迷走神経麻痺の残存を認めた。リハビリテーションを行うも嚥下障害の残存を認め、前医初診時から約 4 カ月を経て当科紹介受診となった。左高位迷走神経麻痺に対して、音声・嚥下改善手術を二期的に行い、良好な経過をたどった。日常診療において、Ramsay Hunt 症候群の診断は比較的容易であるが、咽喉頭所見が見逃される可能性があるため、十分な咽喉頭の観察が必要である。また、今回の症例を通じて、高位迷走神経麻痺の残存があり、リハビリテーションによる改善が十分でない場合は、積極的な外科的介入が有効と考えられた。

  • 丹沢 泰彦, 北原 智康, 松田 帆, 樽本 憲人, 坂本 圭, 関根 達朗, 新藤 晋, 伊藤 彰紀, 中嶋 正人, 加瀬 康弘, 池園 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 190-195
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    われわれは、両側急性感音難聴で発症し、入院時血液検査の結果から内耳梅毒と診断した症例を経験した。副腎皮質ステロイド漸減投与を行いながら同時に駆梅治療を行い、難聴は治癒した。頭部単純 MRI 検査(3D-FLAIR 画像)では、治療前に高信号を呈していた内耳は治療後に正常化した。ペニシリンの普及により梅毒罹患数は戦後激減し、日常臨床で遭遇する頻度が少ない疾患となっていたが、近年患者数が増加しており社会問題化している。多臓器に病変が生じ、症状が多彩であるため診断が容易ではなく、また性感染症のため問診に躊躇する場合もある。梅毒による内耳障害はまれではないため、耳鼻咽喉科の日常臨床において注意すべき疾患である。本症例に関して文献的考察を加えて報告する。

  • 梅野 悠太, 西 憲祐, 西平 弥子, 山野 貴史
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    症例は 71 歳、男性。複視、右眼瞼下垂が出現し、各種検査の結果、右末梢性動眼神経麻痺と診断した。患側のみの副鼻腔炎を有しており、全身麻酔下での内視鏡下鼻副鼻腔手術による上顎洞開放を検討した。しかし、術前評価で内頸動脈の完全閉塞を認めており内科と協議の上、局所麻酔下での上顎洞自然孔の穿破で減圧、排膿を促した後、感染コントロール、急性神経障害に対しステロイドを中心とした抗炎症治療を行った。併せて、血糖コントロール、および抗血小板薬による微小循環の改善を図ることで 1 カ月程度で開眼可能となり、徐々に複視改善を認め比較的良好な経過はたどった。

  • 北原 智康, 関根 達朗, 星野 文隆, 田山 二朗, 池園 哲郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    Madelung 病(良性対称性脂肪腫症)は頸部や体幹、四肢などに対称性、多発性に脂肪が蓄積する疾患である。気道狭窄を伴い気管切開を要した Madelung 病の 1 例を経験したので考察を加えて報告する。症例は 64 歳、男性で、長年のアルコール多飲歴があった。 嗄声や頸部腫脹、労作時呼吸困難を主訴に受診し、頸部皮下・喉頭内への脂肪沈着による気道狭窄を認めた。禁酒の上、左頸部・喉頭内の脂肪組織除去、気管切開術を行った。待機的に対側の脂肪組織除去を行い、最終的に気管切開孔の閉鎖を予定していたが、退院後より飲酒を再開した。レティナ® を装用し状態は落ち着いており、本人も追加の手術はせずに経過観察を希望したため、レティナ® 装用での経過観察の方針となった。本疾患は気道閉塞などの機能異常を認めた際には積極的に外科的治療を検討することが重要であり、喉頭周囲に病変を認める場合は特に周術期の気道管理に注意を要する。

  • 鬼島 菜摘, 波多野 孝, 大氣 大和, 青山 準, 塩野 理, 西村 剛志, 折舘 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 208-215
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    大細胞神経内分泌癌(large cell neuroendocrine carcinoma ; LCNEC)は肺の神経内分泌癌として報告された疾患であり、頭頸部領域の報告は少数である。今回われわれは、下咽頭に発生した LCNEC 症例を経験したため報告する。症例は 86 歳、男性。嚥下困難を主訴とし、喉頭ファイバースコピーでは右梨状陥凹から喉頭腔に及ぶ腫瘍性病変を認めた。気道閉塞に対する気管切開術施行時に腫瘍から生検を施行し、LCNEC の診断となった。喉頭全摘・下咽頭部分切除術を施行し、術後 4 年経過した現在まで再発を認めていない。 頭頸部 LCNEC は WHO 分類第 3 版までは疾患区分が確立されていなかったが、予後が不良な疾患であり、WHO 分類第 4 版では悪性度の高い分類へ見直しが行われた。疾患区部が確立されたことで生物学的特性の理解が進み、頭頸部 LCNEC 独自の治療方針が確立されることが期待される。

  • 西 憲祐, 梅野 悠太, 西平 弥子, 山野 貴史
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 68 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    胃酸逆流が原因と考えられたまれな急性多発咽喉頭潰瘍症例を経験した。症例は 20 歳代後半の男性で、多量飲酒による頻回の嘔吐、意識障害を来した翌日から咽頭痛を自覚し、咽喉頭粘膜発赤および多発する白色病変が出現した。急性喉頭蓋炎として抗菌薬とステロイド薬を用いて加療を行い、自覚症状ならびに局所所見は改善し得たが、細菌感染を原因とした急性炎症の典型例と合致しない所見を認めていた。病歴・局所所見・退院後に判明した病理組織学的検査から、最終的に胃酸逆流による粘膜傷害が原因であったと診断した。急性に発症する多発咽喉頭潰瘍の原因の一つとして胃酸逆流も念頭に置いておく必要があると思われた。

臨床ノート
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