2022 年 68 巻 4 号 p. 243-250
成人人工内耳装用者の音声知覚能力の継時的変化(術後 3 カ月、1 年、2 年、5 年、10 年)について、長期的な変化はどの程度あるか、当初の評価として手術後どの時点での検査が妥当か、またスピーチ・プロセッサの変更などによる変化がみられるかなどを把握することを目的に、装用閾値、単音節、単語および文の聴取能について検討した。装用閾値では、手術後 3 カ月時点の中央値で既に 26 dB であり、その後の変化は認めなかった。単語、文の聴取能においては 3 カ月(中央値それぞれ 80%、87.5%)から 1 年(同それぞれ 85%、94.5%)で有意に向上しており、その後ほぼ変化はなかった。単音節でも 1 年以降 10 年までほぼ変化がなかったことから、術後 1 年で人工内耳の効果を評価することが妥当と思われた。文では 1 年以降で中央値 90%以上であり、検査の天井効果と思われ、雑音下の検査など別の検査方法で評価する必要があると思われた。