2023 年 69 巻 2 号 p. 124-128
症例は 10 歳代の女子で、数年前から嚥下時の違和感があり、起床時の突然の嚥下困難と喀血のため近医耳鼻咽喉科を受診した。右口蓋扁桃下極付近に基部を有する 3 cm 程の暗赤色の腫瘤により咽頭腔は狭窄し、出血を伴う中咽頭血管腫の疑いで翌日当科を紹介された。当科初診時には腫瘤は発赤腫脹し白苔の付着を認め、炎症を伴っていると考えられたが、血液検査では軽度の炎症反応を認めるのみで、凝固機能も正常であった。翌日の造影 MRI では腫瘤上縁と口蓋扁桃の下極の一部に境界が不明瞭な領域を認め、ADC 値は低値であり、悪性リンパ腫や固形悪性腫瘍も鑑別として考えられた。初診から 1 週間後には腫瘤の発赤腫脹は軽減し、連続する右口蓋扁桃と同様の外観となり、生検でも炎症を伴う扁桃組織の診断であった。再燃を警戒し、初診から 3 週間後に口蓋扁桃摘出術を施行した。病理組織学的検査で腫瘤部分は扁桃の過形成性組織で、悪性所見は認めなかった。