2023 年 69 巻 6 号 p. 415-418
上下顎移動術は顎変形症に対して行われる手術であり、術後声帯麻痺についての報告はあるが、その原因や頻度に関しては明らかになっていない。われわれは上下顎移動術後の声帯麻痺の頻度を統計学的に解析し、原因を考察した。当院口腔外科にて上下顎移動術を受けた 133 例を後ろ向きに解析した。133 例のうち 13 例(9.8%)に術後声帯麻痺を認めた。改善率は 100%であった。全身麻酔手術全体の術後声帯麻痺に関する諸家の報告では 0.03-0.2%であり、上下顎移動術後の声帯麻痺の頻度が高いことが示された。加えて、術後嗄声を訴える症例 20 例のうち 6 例に喉頭肉芽を認めた。手術操作により挿管チューブが移動することで喉頭への機械的刺激が大きい手術であることが考えられる。また、下咽頭、喉頭粘膜下血腫を認める症例もあり、反回神経、周囲組織の圧迫や反回神経栄養血管が圧迫され低灌流となり声帯麻痺を来したと考える。今後、本術式の合併症の一つとして医科歯科に周知していく必要がある。