2024 年 70 巻 2 号 p. 70-77
蝶形骨洞真菌症は比較的まれな疾患である。しかしながら近年増加傾向にあることが報告されている。蝶形骨洞には解剖学的に重要な構造物が存在するため、蝶形骨洞真菌症は、手術により真菌塊の摘出を行うことが必要である。今回われわれは、外来処置により蝶形骨洞真菌症が治癒した症例と外来処置後も病態が残存し手術治療を行った症例の 2 例を経験したため報告する。さらに本 2 例と過去 5 年間に当科で経験した蝶形骨洞真菌症 18 例を比較検討した。蝶形骨洞真菌症では、画像所見にて蝶形骨洞自然孔が拡大もしくは真菌塊が自然孔外や後部篩骨洞に存在する場合には蝶篩陥凹を内視鏡下にしっかり観察することが必要である。蝶形骨洞自然孔外に真菌塊があればこれを除去することで、蝶形骨洞内の aeration が改善し本症例のように自然治癒もしくは蝶形骨洞内の炎症が軽快する可能性がある。