2024 年 70 巻 4 号 p. 161-170
2023 年 3 月から 12 月までめまいを主訴に、当院を受診した症例は 1,500 例であった。片頭痛の一次スクリーニングによる片頭痛症例は 369 例であり、全めまい症例の 24.6%であった。片頭痛症例のうち前庭性片頭痛(以下 VM と略)確実例は 57 例であり、全めまい症例の 3.8%であった。初診時から 4 週間経過を追跡できた VM 確実症例 37 例に対してミグシス®+メリスロン®+アデホス® の 3 剤併用投与の有効性を検討する前向き研究を行った。頭痛の評価方法としては、治療開始前 2 週間の鎮痛剤使用回数と、治療開始後 2 週目から 4 週後までの鎮痛剤使用回数を指標とした。前回報告したミグシス® 単独投与群では頭痛改善率が 28.6%であった。本報告では頭痛の改善率は 43.2%であった。効果が不十分であり、ほかの予防薬との併用、長期的な治療が必要であると考えられた。めまい症状の評価方法としては、めまいによる日常生活の障害度のアンケート(以下 DHI スコアと略)を用いた。DHI スコアは初診時が平均 45.4 ± 19.8 点、2 週後が平均 32.1 ± 24.4 点、4 週後が平均 22.1 ± 22.1 点であった。初診時と 2 週後の間(p = 0.005)では、有意な改善を認めた。および、初診時と 4 週後の間(p = 0.00002)にも有意な改善を認めた。ミグシス® 単独投与群と比較し、初診時と 2 週後の間に有意な改善を認めた。今回の 3 剤併用により、めまいについては早期に改善がみられることが示された。Jacobson らの報告に基づくと、ミグシス® 単独投与群では、めまいの有意な改善率 46.4%であった。本報告で 62.2%であった。このように VM に対しては、片頭痛予防薬のみと、同薬剤に内リンパ水腫改善に有効な抗めまい薬を併用することで、頭痛、めまいともにやや改善したが、有意差は認めなかった。今後、使用対象年齢などに留意しながら予防薬を複数個使用する。さらに頭蓋内圧の低下、内リンパ水腫に有効な薬剤を使用し、片頭痛の悪化を防いでいくことが、VM 予防にも必要であると考えられた。患者自身で対応できることについて啓蒙していくことも含めて、難治性である VM 治療に対応していくことが必要であると考えられた。