耳鼻と臨床
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症例報告
頸部膿瘍に至った先天性外耳道閉鎖症の 1 例
森下 大樹荒井 康裕和田 昂中川 千尋折舘 伸彦
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2024 年 70 巻 4 号 p. 171-176

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抄録

中耳炎の頭蓋外合併症として生じる頸部膿瘍は Bezold 膿瘍と呼ばれ、抗菌薬が発達・普及した今日では、まれとなった。先天性外耳道閉鎖・狭窄症に外耳道真珠腫を伴い、さらに頸部膿瘍に至った症例は極めてまれである。今回、先天性外耳道閉鎖症により外耳道真珠腫が発生し、頸部膿瘍に至った 1 例を経験したので報告する。25 歳、男性。小児期より左小耳症、左難聴を指摘されていたが、医療機関を受診していなかった。10 日前より左耳痛、開口障害が出現したため、受診した。左外耳道は閉鎖しており、側頭骨造影 CT で左乳様突起周囲の膿瘍形成を認めた。先天性外耳道閉鎖症に伴う外耳道真珠腫および Bezold 膿瘍を疑い、抗菌薬投与と左外耳道真珠腫摘出術を施行した。真珠腫は鼓室・乳突腔に充満し、外耳道下壁は破壊され、骨瘻孔を形成していた。耳下腺の膿瘍腔まで進展した真珠腫を全摘し、術後 1 年 3 カ月時点で感染と真珠腫の再発を認めていない。

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