2024 年 70 巻 4 号 p. 215-222
姿勢の保持や運動時には、人間に加速度が負荷される。平衡中枢へは視覚、前庭、体性感覚系からの入力があり、嘔吐中枢へは胃腸からの入力がある。それを平衡中枢が調節できない場合は平衡機能障害が現れ、嘔吐中枢が調節できない場合は嘔吐が現れる。嘔吐中枢は平衡中枢よりも調節能力が高いので、嘔吐が現れるためには持続的で大きな入力が必要である。嘔吐中枢において、胃腸からの入力の大きさが平衡中枢からの入力の大きさに影響を及ぼす。胃腸からの入力が大きい者には、小児期に 2 つの中枢周辺に複雑で巨大な神経ネットワークが構築される。これには嘔吐を抑制する機能があり、抑制機能の強い者ほど平衡機能障害を起こすと嘔吐が現れやすくなる。前庭障害に伴う嘔吐には平衡機能障害、嘔吐中枢へ向かう胃腸からの入力、平衡中枢と嘔吐中枢周辺の神経ネットワーク、嘔吐中枢の性質が関与する。