2024 年 70 巻 4 号 p. 207-214
副甲状腺異型腺腫(atypical parathyroid adenoma:APA)は腺腫と癌の境界とされるまれな病態である。今回、APA の診断となった症例を経験した。症例は 61 歳、男性。肺癌の術前に施行した FDG-PET で甲状腺右葉背側に異常集積を認め、当科紹介となった。各種検査より、腺腫による原発性副甲状腺機能亢進症と考え、手術を予定した。腫瘤は甲状腺や反回神経を含む周囲組織との癒着を認めたが、剥離は可能であり、腫瘤のみを摘出した。術後病理では APA の診断となり、剥離面に腫瘍細胞が露出していた。術後、血清 Ca 値は正常化したものの intact PTH は術後 1 カ月で正常化した後再上昇を認めた。再発は認めていないものの、今後はより慎重な経過観察が必要である。副甲状腺腫瘍摘出術中に周囲組織との癒着を認めた場合には、APA の可能性を考え必要に応じた周囲組織の合併切除が必要である。