2025 年 71 巻 4 号 p. 178-183
非結核性抗酸菌性中耳炎は非常にまれな難治性中耳炎であり、長期の抗菌薬多剤併用が必要とされる。迅速発育型抗酸菌の一つであるMycobacterium abscessus(M. abscessus)に対してはアミノグリコシド系抗菌薬であるアミカシン(AMK)が用いられることが多いが、副作用として耳毒性があり、非可逆性の聴力消失や前庭障害を起こす可能性がある。今回、われわれはM. abscessusによる非結核性抗酸菌性中耳炎のまれな1例を経験した。治療前より蝸牛・前庭障害を認めたため、耳毒性薬剤を避けた抗菌薬多剤併用療法を施行した。手術加療を行わずに症状改善を得ることができ、抗菌薬投与中止後も10カ月以上感染の再燃なく良好に経過している。薬剤性難聴は遅発性、非可逆性に難聴を来すため、治療前より蝸牛・前庭障害を来している場合には耳毒性薬剤を回避した治療方針を考慮する必要がある。