耳鼻と臨床
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Cystovestibulogrammと温度興奮性試験を用いた毛ルモツトの前庭感覚上皮ストレプトマイシン障害の量的評価
Gert Lange
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1968 年 14 巻 4 号 p. 217-227

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抄録

末梢平衡器の感覚上皮における組織学的な変化は, 従来障害の記述と模写にもとついていたが, これでは今日も早充分とはいえない. 著者はこのたびOzothinが末梢平衡器に対しても, 蝸牛におけると同様にストレプトマイシンの毒性を減ずる作用があるかどうかを研究するにあたり, 光学顕微鏡下に変化した感覚細胞を算え上げて障害の率をパーセントで表わす方法をとった.
モルモツト63匹について組織学的な検討を行なつた. 量的な決定は82個の上および外側半規管のクリスタを鏡検し, それぞれのクリスタについて100個の細胞を算出した.
これらモルモツトの一部は対照群であり, 他は10~30日間の250mg/kgの水溶性硫酸ストレプトマイシンを筋注した. ストレプトマイシン処理した動物の半数は前もつて1.25ml/kg Ozothinを筋注した. また対照の一部はOzothinのみで処理された.
末梢平衡器の機能を調べるために, モルモツトは温度検査を行なつた. 温度刺激によつて正常例では眼振が平均65打数となる. 眼振打数の減少を平衡機能低下の指標とした.
温度検査は回転検査にくらべて眼振の解発がよくすぐれているが, 鼓膜が破れてしばしば中耳炎をおこすので系統的な経過観察はできず, ただ一回だけ断頭前に温度試験を行なつた.
結果と考按
1. ストレプトマイシン中毒後の前庭感覚細胞の障害の程度は, 障害された細胞を算出することにより組織学的標本の中に量的に確定することができた. この方法でストレプトマイシンの量の増加とともに, 段階的に中毒性変化の増加が認められた.
2. 温度検査における興奮性は組織学的に認められる障害が増加するとそれに反して消失した. ストレプトマイシン注射30日後, モルモツトの半数は迷路反応が両側とも脱落した. しかしこの時点での毛細胞の変化は約50%で, 残余の毛細胞は何らの障害もみられなかつた. 前庭毛細胞においても, 蝸牛毛細胞の場合と同様に, 光学顕微鏡的にとらえうる変化がみられる前に正常の機能は失なわれるものと思われる.
3. ストマイ中毒の場合まず第一にクリスタのI型感覚細胞が侵され, さらに大量の毒剤が与えられると基底細胞が部分的に破壊されるが, 支持組織の結合組織層は不変である.
4. Ozothinは平衡器に対して蝸牛の場合と異なりストレプトマイシンに対する保護的な作用を示さなかった.
5. このモルモツトの実験でも未公開の猿を用いた実験の結果からもメニエール病に対してストレプトマイシンとOzothinを一緒に与えれば平衡器だけ破壊することができるだろうという予想がたつ.

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