抄録
咽喉頭異常感 (症) と甲状腺疾患との関連は, 頻々注目されているが, 甲状腺術後に限つての報告はない. 甲状腺術後の場合, 頚部の物理的刺激に加えて, 病気に対する不安より咽喉頭異常感が出現しやすいものと考え, 過去2年間に当科で手術をし経過を追えた80症例に咽喉頭異常感についてアンケート調査を行つた.
咽喉頭異常感は, 甲状腺術後患者の67.5%に存在し, 特に悪性疾患例に多く認められた.
甲状腺の病気が気になる患者に咽喉頭異常感が多く, 病気が気にならない患者に異常感が少なかつた.
異常感の種類は, 悪性・良性を問わず似た傾向を示し,「のどのつつばり感」が両者ともに最多であつた.
異常感の経過は, 良性の場合は,「手術の時期と関係なく強くなつたり, 弱くなつたりする」例が多く, 悪性の場合は,「手術直後が最も強く, 次第に弱くなつてきた」例が多かつた.
異常感を覚える症例にOxazolamを投与し改善率をみたが, 良性の場合は高く, 悪性の場合は低かつた. このことは良性と悪性との異常感に本質的な差が存在する可能性を示唆するものと考えた.