抄録
海綿静脈洞浸潤を伴う上顎洞原発腺様嚢胞癌の一例をとりあげ, 手術の適応, アプローチの方法, 再建術術式について検討した. 前頭蓋底浸潤癌に比較すると, 中頭蓋底に達する症例では, 容易に海綿静脈洞に入り, 内頸動脈周囲に浸潤するため, en-blocの摘出がきわめて困難になる. しかし, 眼窩内容を除去する症例では視神経から外転神経まで保存する必要がなく, また内頸動脈も切除し大伏在静脈で再建することにより, 今後の技術的な進歩があれば, 海綿静脈洞浸潤癌でも手術の対象となる可能性は十分有ると考えられる.