抄録
ニオイ刺激に対する嗅覚正常者の脳波変動を定量的に空間分析的に把握する目的で, 周波数分析やコヒーレンス分析を行い, 以下のような結果を得た.
1) 快適臭 (臭素B) で刺激した時, 脳波変動の周波数分析の結果は, θ帯域で頭皮上中心部の電位が減少した. 不快臭 (臭素E) で刺激した時は, α2, 帯域で頭皮上周辺部の電位が増大した. さらに閾値上にニオイ刺激強度をあげても脳波変動の程度は同様であつた.
2) 頭皮上での脳波変動の機能的関連性をみるコヒーレンス分析では, ニオイ刺激時にδ帯域成分は前額部や前頭部の電極部位と他の部位との関連性が減少し, α1, α2帯域成分は頭皮上の広範な電極部位での機能的関連性が増大した.
ニオイ刺激に対する脳波変動は, 被験者の嗅粘膜に臭素が到達することによつておこり, ニオイを自覚することによつて賦活されると考えられた.