抄録
当科で手術を行った耳硬化症33症例(62耳)の術前CT所見を検討し術前聴力との関連性を調べた。62耳をCT所見で分類すると、異常所見を認めないもの25耳 (40.3%、A群)、fissula ante fenestram (FAF) 部に限局した脱灰所見を認めた15耳 (24.2%、B1群)、サジ状突起や前庭窓前方に脱灰所見が拡大した12耳 (19.4%、B2群)、脱灰が蝸牛周囲におよんだ4耳(6.5%、B3群)、前庭窓前方の硬化性病巣を認める6耳(9.7%、C群)となった。脱灰所見の拡大に伴ってA群(27.1dB)、B1群(30.6dB)、B2群(34.6dB)、B3群(36.7dB)と骨導閾値の上昇傾向が認められ、Iabyrinthine otosclerosisに伴う変化と考えられた。またA群、B1-3群では平均骨導閾値は2000Hzの閾値上昇が最も大きくCarhart効果が顕著であった。前庭窓部や蝸牛周囲に脱灰の拡大した群(B2+3群)ではB1群と比べて有意な気導閾値上昇と気骨導差の拡大が認められ、前庭窓における海綿骨増殖性病巣の拡大がアブミ骨固着を強固にしたと考えられた。平均気骨導差は各群とも低音域ほど拡大する傾向があり (stiffness curve)、硬化性病巣を認めるC群(37.5dB)ではB1群(21.6dB)と比べて有意な気骨導差の拡大が認められた。この差は、C群の平均骨導閾値におけるCarhart効果が比較的小さいことが関与していると思われるが、その原因は不明である。CT検査により耳硬化症に伴う伝音系の評価のみでなく、感音系障害(labyrinthine otosclerosis)の評価にも有用な情報が得られることが確認された。