抄録
食道癌術後における嚥下障害は、主に食道期に相当する段階での問題が関与している。食道癌手術例では、嚥下にかかわる咽頭期機能は食道や気管が手術操作により剥離されたり、食道経路が変更されることなどに影響されるものと推測されるが、障害の症状としては一過性である。しかし、反回神経麻痺や喉頭挙上不良など手術合併症にかかわることが原因となれば、やや繁雑な治療が必要となるため予防が最も大切である。しかしその場合でも、嚥下の訓練により誤嚥が臨床的に重大な問題であり続けることはまれである。従って、食道領域における嚥下障害への取り組みは、今後も主に代用食道の機能に関するものになると考えられる。