舌全摘症例においては、以前は喉頭合併切除が一般的であったが、近年ではより高い術後のquality of lifeを得るために喉頭を温存するようになってきた。1982年から1998年までに国立がんセンターにおいて、喉頭を温存して舌全摘術を行った30症例の、嚥下障害に対する対策について報告した。当院では、舌全摘術後の再建方法の工夫により、30例中21例 (70%) の症例で喉頭機能の温存が可能であった。しかし、喉頭温存が不可能であった9症例においては、口峡部における皮弁の容量不足、広範囲の合併切除、術前から存在する脳機能低下などが問題点として挙げられた。今後これらの問題に対しては、複合皮弁の利用や、喉頭挙上術などの追加手術、知覚皮弁の利用といった術式の工夫に加えて、再建の限界を知ることも必要と思われた。