抄録
頸部深部受容器の視運動性眼振に及ぼす影響を調べる目的で、家兎を用いて実験を行った。視機刺激のドラムの回転と同じ方向に頭部が向いた姿勢では、正頭位に比較して眼振の緩徐相と振幅は増大し、逆方向に向いた姿勢ではいずれも減少した。頸部の伸展側のC1-C4の切断でこれらの変化は減弱した。以上の結果より、動く対象物を眼で追う場合、頭部をその方向に向けることによって上頸部の深部受容器が賦活化され活動し、中枢を介して追跡運動が促進されると考えられた。眼振が抑制される現象については、視点を別の対象に移す際に、頭部を動いている対象と逆方向に回転すると、視野の動きによる眼振が抑制され、生理的な視点移動の目的にかなうと考えられた。