耳鼻と臨床
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48 巻, 2 号
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  • 武富 正夫
    2002 年48 巻2 号 p. 69-77
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部深部受容器の視運動性眼振に及ぼす影響を調べる目的で、家兎を用いて実験を行った。視機刺激のドラムの回転と同じ方向に頭部が向いた姿勢では、正頭位に比較して眼振の緩徐相と振幅は増大し、逆方向に向いた姿勢ではいずれも減少した。頸部の伸展側のC1-C4の切断でこれらの変化は減弱した。以上の結果より、動く対象物を眼で追う場合、頭部をその方向に向けることによって上頸部の深部受容器が賦活化され活動し、中枢を介して追跡運動が促進されると考えられた。眼振が抑制される現象については、視点を別の対象に移す際に、頭部を動いている対象と逆方向に回転すると、視野の動きによる眼振が抑制され、生理的な視点移動の目的にかなうと考えられた。
  • サンドイッチ法と接着法の比較
    永井 知幸, 浅見 鳴子, 大迫 廣人, 牧元 宏, 井藤 健, 紀井 登志哉
    2002 年48 巻2 号 p. 78-82
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    小児の鼓膜形成術が接着法で可能か、手術治療を行った12歳以下の小児の73耳を検討した。内訳はサンドイッチ法を行った35耳と接着法を行った38耳である。サンドイッチ法の初回鼓膜穿孔閉鎖率は86%、接着法の初回鼓膜穿孔閉鎖率は63%であり、再手術を行った結果はそれぞれ94%と92%の最終鼓膜穿孔閉鎖率であった。接着法の手術手技として、鼓膜縁は輪状に切除し、鼓膜の皮膚層を少し外側に剥離して、筋膜をオーバーレイあるいは栓をするように置いた症例で、再穿孔が少なかった。
  • 恒冨 今日子, 坂本 菊男, 古川 満, 井之口 昭
    2002 年48 巻2 号 p. 83-86
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    結節性筋膜炎は比較的まれな疾患で、数日ないし十数日で急速に増大する孤立性の皮下結節として発来するのが典型的である。急速に増大するため悪性腫瘍との鑑別が問題となるが、その本体は線維芽細胞の増殖を主体とした反応性の良性疾患である。今回われわれはオトガイ下に発生した結節性筋膜炎の1症例を経験した。症例は24歳の男性で、オトガイ下腫瘤を主訴に来院した。CTおよび頸部エコーで血流に富んだ腫瘍として描出された。外科的切除後、病理標本にて結節性筋膜炎の診断を得た。術後10カ月の時点では再発を認めない。
  • 側壁型を中心として
    草野 謙一郎, 澤津橋 基広, 溝上 宏幸, 和田 繁, 津田 邦良, 井之口 昭
    2002 年48 巻2 号 p. 87-94
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1982年から1999年までに佐賀医科大学附属病院耳鼻咽喉科で一次治療を行った中咽頭扁平上皮癌48例で、特に側壁型38例を対象に手術療法、放射線単独療法、少量CDDP同時併用放射線療法の治療成績を比較検討した。側壁型38例の5年累積生存率は43%で、 5年死因特異的生存率は49%あった。側壁型のstage別での5年累積生存率はstageI 100%、stageII100%、stageIII69%、stageIV29%であり、進行癌で生存率が低かった。側壁型の治療法別の5年累積生存率は、少量CDDP同時併用放射線療法群 (7 例) 69%、手術療法群 (19例) は37%、放射線療法単独群 (7例) は29%であった。それぞれの療法群の単純な比較はできないが、少量CDDP同時併用放射線療法群が放射線療法単独群よりも治療成績が良い傾向にあった。また、一次治療が毛術主体群 (19例) と放射線療法主体群 (19例) の比較検討では、局所再発率、リンパ節再発率、救済率とも両群の間に差を認めなかった。現在当科では、機能温存を図りつつ、少量CDDP同時併用放射線療法と手術療法を組み合わせた集学的治療を行っている。
  • 菊地 俊彦, 石丸 幸太朗, 山野辺 滋晴, 小林 俊光
    2002 年48 巻2 号 p. 95-98
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    眼症状を伴った巨大な原発性上顎嚢胞の1症例を経験した。症例は70歳の女性。左眼球突出と複視を主訴として受診した。鼻・副鼻腔手術および外傷の既往はなかった。CTおよびMRIにて、左眼窩の内側壁および下壁に骨欠損を伴った拡張性の嚢胞性陰影が左上顎洞にみられた。左原発性上顎嚢胞との診断の下、局所麻酔下に内視鏡的副鼻腔手術を施行。嚢胞内には漿液性分泌液が見られ、これを除去。中鼻道および下鼻道に大きな開口部を形成した。術後経過は良好であった。原発性副鼻腔嚢胞に関して若干の文献的考察を行った。
  • スギ花粉エキスとの比較試験
    奥田 稔, 信太 隆夫, 今野 昭義, 藤田 洋祐, 仲野 公一, 坂倉 康夫, 石川 哮
    2002 年48 巻2 号 p. 99-116
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    プルラン結合アレルゲン (ポセプラン) の臨床効果をアレルゲン治療エキス「トリイ」スギ花粉を対照として、多施設による無作為化非盲検比較試験で検討した。問診でスギ花粉飛散期に一致して発症または増悪し、IgE抗体RAST (スギ) 2以上あるいは皮膚テスト (スギ) が陽性であった15歳から65歳未満のスギ花粉症患者を対象とし、124例が両群に割り付けられた。有効性は1997年の重症度と1999年の重症度との比較により評価を行った。1999年重症度改善度では、スギ花粉エキス群がポセプラン群に比較して有意に勝る結果となった。中止・脱落例がスギ花粉エキス群で有意に多かったため、この結果に影響を及ぼした可能性が考えられた。割り付けられた全例を対象として改善度を比較すると、同等性は検証されなかったものの両群で有意差はなく、その有効性は同程度であると考えられた。安全性については、スギ花粉エキス群で因果関係の否定できないアナフィラキシー反応と考えられる有害事象が発現し、また有害事象の発現率についてもポセプラン群で有意に少なかった。以上の結果からポセプランは有効性の面では従来のスギ花粉エキスとほぼ同程度と考えられるが、安全性、維持量に達するに要する注射回数の面では本剤が優れており、減感作を受ける患者や実施する医師にとって負担の少ない減感作治療薬と考えられた。
  • 長期投与試験
    奥田 稔, 信太 隆夫, 大久保 公裕, 藤田 洋祐, 石川 障
    2002 年48 巻2 号 p. 117-127
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症患者におけるプルラン結合アレルゲン (ポセプラン) の有効性、安全性の検討を長期投与試験にて行った。なお、減感作を行わない通常の薬物治療を受けている症例を非投与群として設定し、有効性評価の参考とした。ポセプランの投与は1995年花粉飛散終了後より開始し、1999年の花粉飛散期まで行われた。symptom-medicatioll scoreは投与期間中の1997年-1999年にわたって、非投与群に比し有意にスコアが低かった (p<0.001)。特にmedication scoreは治療終了後の2000年においても有意な低下が認められた。また、2000年のシーズンは患者の印象や飛散期の症状の程度など、主としてQOLに関する項目についてアンケート調査を実施した。アンケートの面からも治療終了後における減感作療法の効果が維持しているものと考えられた。1996年から1999 年までの「有効」以上の有効率は、1996年より、それぞれ59/77例 (76.7%)、40/59例 (67.7%)、38/47例 (80.9%)、22/32例 (68.8%) であった。花粉飛散数が各年で異なり、その影響により有効率に差が見られた。一方安全性では、有害事象が認められたのは、 1996年が13例21件 (14.8%) であった。その後1997年より、1.5%、1.7%、8.8%であった。また、特に重篤な副作用の発現は認めなかった。
  • 一般試験
    奥田 稔, 仙波 治, 今野 昭義, 藤田 洋祐, 信太 隆夫
    2002 年48 巻2 号 p. 128-139
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    プルラン結合アレルゲン (ポセプラン) の有効性・安全性の評価を、スギ花粉症患者で評価する目的で、多施設による一般試験を実施した。問診でスギ花粉飛散期に一致して発症または増悪し、IgE抗体RAST (スギ) 2以上あるいは皮膚テスト (スギ) 陽性の15歳以上65歳未満のスギ花粉症患者を対象とした。1997年に83例、1998年に57例の合計140例がエントリーされ、それぞれ花粉シーズン終了後治療を開始した。医師の有効度評価では、「有効」以上は1998年が68.4%、1999年が71.1%であった。従来のスギアレルゲンによる減感作療法の治療成績と遜色のない結果であると考えられた。一方、安全性において、137例中15例 (10.9%) に因果関係が否定できない有害事象が発現した。そのうちの1例にアナフィラキシー反応と思われる症状が見られ、体調の悪い際には投与量を減量させるなどの注意が必要であると考えられた。以上ポセプランは、プルランを結合することで高い安全性と従来のアレルゲンエキスに劣らない有効性を兼ねた減感作療法剤であるといえた。
  • 井口 秀人
    2002 年48 巻2 号 p. 143-147
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    胃食道逆流症 (gastro-esophageal reflux disease; GERD) は酸性胃内容物の食道内逆流によって他覚所見と自覚症状の両方、あるいはいずれかを呈し、症状あるいは食道炎の改善のために医学的対応の必要性のあるものと定義される。従ってGERDには内視鏡的に明らかな逆流性食道炎の所見を呈する内視鏡陽性のものと、その所見を欠く内視鏡陰性のGERDが存在する。胸やけ症状は日常生活を阻害する主症状であるが、 GERDは他にもさまざまな症状を呈し、非心性胸痛や慢性咳噺、咽頭炎、喉頭炎などはいずれも酸逆流と密接に関与していると考えられている。近年、日本においてもその頻度は増加しており、これには食生活の欧米化や高齢化のほか、日本人の酸分泌能の増加やH. pylori陰性者の増加が関与していると考えられる。治療においては、PPIを初めから用いるstep down therapyが治療効果面や経済性からも優れている。最近、日本においてもようやくPPIによる長期維持療法が承認され、今後多くの患者さんがより最適な治療を受けることが期待される。
  • 2002 年48 巻2 号 p. 148-151
    発行日: 2002/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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