抄録
われわれは、両側声帯麻痺に対する手術には、Ejnell法を第一選択として積極的に施行している。しかし、症例を重ねるに従いいくつかの問題点が明らかになってきた。そこで、これらの問題点と、その対策法について検討した。1. 癒着・瘢痕を伴う例では、糸の牽引だけでは十分な声門開大が得られないことがあるので、適応には慎重を期すべきである。2. 甲状軟骨上の針の刺入位置、刺入方向を的確に決定し、刺入回数を減らすように注意する。3. 刺入位置の決定には、喉頭内腔から針を刺すことができるendo-extralaryngeal needle carrierが有用である。4. 牽引糸の固定には、スペーサーが有用である。われわれの用いているバイオセラム製ボタンは、薄いため違和感が少なく、糸を確実に結紮固定でき、非金属なのでCT、MRIなどの検査に支障を来さないことから、スペーサーに適している。