耳鼻と臨床
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咀嚼運動を誘発する工夫により嚥下障害の改善をみた症例
巨島 文子高安 奈津子小田 健一郎小畑 由佳
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2003 年 49 巻 5 号 p. 358-362

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抄録
理解力が低下した患者が口腔期障害が合併すると嚥下訓練に難渋することが多い。咀嚼運動を誘発する工夫をして嚥下訓練を行った2症例を報告する。症例1は50歳男性。一酸化炭素中毒により前頭葉を中心とした白質障害を呈し、無言、無動、パーキンソニズムを来した。指示に従って開口できず、食物は口腔内に残存した。咀嚼を要する食品を患者自らの手に持たせて食べる工夫をしたところ、自発的に開口して咀嚼運動が出現し咽頭期嚥下運動が誘発された。症例2は30歳男性。下垂体腫瘍、水頭症術後で右前・側頭葉・基底核に病変を見た。閉口不能となり咀嚼できずに食べ、咽頭期嚥下運動の惹起不全を認めた。スプリントとチンキャップを装着して徐々に閉口した。さらに上下の歯の間に食物を置くことにより、咀嚼運動が誘発され閉口が可能となった。舌の後方運動、口腔から咽頭への移送と咽頭期嚥下運動の惹起が得られ嚥下障害が改善したと考えた。
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