抄録
実際に中耳換気が行われたか否かを高圧環境下での耳症状発現の有無で推測できると考え、耳管機能検査の結果と高圧酸素治療による耳症状発現の関連について検討した。高圧酸素治療を受けた71耳について、治療開始前の耳管機能検査 (sonotubometry検査) の結果と、初回治療中の耳症状、治療直後の鼓膜所見について比較検討した。sonotubometry検査が異常を示した割合は、高圧酸素初回治療中に耳症状を認めなかった46耳中19耳 (41%)、軽度の耳症状を認めた17耳中8耳 (47%)、重度の耳症状を認めた8耳中6耳 (75%) であった。症状なしの群と軽度の耳症状を示した群、あるいは重度の耳症状を示した群との間で、統計学的に耳管機能検査異常の割合に有意差を認めなかった。初回治療直後の鼓膜所見が正常を示した39耳では、耳管機能検査異常の割合は14耳(36%) であり、一方、鼓膜が異常を示した28耳では、耳管機能検査異常の割合は18耳 (65%) であった。鼓膜異常を示した群で耳管機能異常の割合は高い結果となった。以上の結果より、中耳換気能が正常と考えられる耳でも、sonotubometry検査での正常率は59%にとどまり、中耳換気能が異常と考えられる耳でも、sonotubometry検査での正常率が25%発生すると考えられた。