抄録
耳下腺結核症例を報告した。患者は63歳の男性で増大する耳下腺部の腫れを主訴として当科を紹介された。耳下腺に複数個の腫瘤を触知したが、頸部リンパ節の腫れはなく、顔面神経麻痺も認めなかった。細胞診の結果は、ワルチン腫瘍を疑う所見とのことで多発性ワルチン腫瘍の診断のもと特異な症例でないとの判断で術中病理診断を依頼することなく全身麻酔下に摘出術を行った。手術後の病理診断の結果は摘出した6個の腫瘤すべてが結核との診断を得た。耳下腺結核は顔面神経麻痺を伴うこともあるほか、多彩な臨床像を呈することがある。本症例の特徴は6個の腫瘤を耳下腺内に認めたことである。耳下腺結核は最近増加傾向にあるとの報告もあり術中病理診断の重要性ついて言及した。