耳鼻と臨床
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[第28回日本嚥下医学会]高齢者の嚥下障害の実態とその治療
-痴呆の影響と栄養サポートチーム (NST) 介入の効果-
平田 佳代子佐藤 奈央金井 枝美古川 琢爾望月 弘彦岩田 誠一郎古見 健一里田 誠山根 梢伊藤 恵子廣瀬 肇佃 守
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2006 年 52 巻 1Supplement1 号 p. S25-S39

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抄録
高齢者では嚥下障害を呈する割合が高いことが報告されている。当院入院中に嚥下治療チーム (swallowing therapy team: STT) に紹介された65歳以上の高齢者68例 (平均81.8±7.0歳) について嚥下障害の実態を痴呆の影響を含めて調査し、治療法について栄養サポートチーム (nutrition support team: NST) 介入の効果とともに検討した。当院では2004年4月からNSTが稼働し、STTと連携したチーム医療を行っている。嚥下障害重症度分類についても食形態や治療法を対応させてコメディカルスタッフにも分かりやすい独自の嚥下障害重症度分類を設定した。この分類法は症例の分布が1峰性で、ビデオ嚥下内視鏡 (videoendoscopic examination of swallowing: VE) 所見との相関が高く、実用性が高いことが確認された。嚥下障害の原因は加齢、痴呆、廃用性などの影響によると思われる不明例が46%と多く、脳血管障害が40%と次に多かった。やや高度以上の痴呆症例は65%であり、そのVE所見では口腔期の障害が多いという特徴がみられた。治療法は摂食訓練7%、基礎訓練15%であり、痴呆などのため嚥下訓練が行えず、言語聴覚士によう摂食観察、評価のみを行ったものがそれぞれ29%、49%と多かった。25%は栄養障害が疑われてNSTが介入し、栄養管理を行った。治療効果として経口摂取者の食形態がより常食に近づき、嚥下障害重症度では有意に改善がみられた。治療法別には評価のみの症例では嚥下障害重症度の改善率は10%と低かったが、摂食訓練、基礎訓練、摂食観察の症例では33-70%に改善がみられた。やや高度以上の痴呆症例での改善率は低かった。NSTが介入した症例では介入しなかった症例より改善率が高いという結果は得られなかったが、栄養状態が改善しており、誤嚥性肺炎などの合併症が抑制された可能性があると考えられた。
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