日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
当科音声外来における声帯麻痺症例の臨床統計
―原因疾患別の音声改善率と改善時期の検討―
佐藤 克郎佐藤 裕子山本 裕早坂 修高橋 姿
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2007 年 110 巻 2 号 p. 60-64

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抄録

耳鼻咽喉科の診療において声帯麻痺はまれな疾患ではなく, 特に医育機関や総合病院では手術後の紹介症例が多いと思われる. 声帯麻痺の治療にはさまざまな方法があるが, 挿管性麻痺などでは自然回復も多く, 治療法選択と時期決定の判断は単純ではないのが現状である. そこで, 当科で経験した声帯麻痺症例を臨床的に調査し, 音声予後の自然経過を中心に検討した. 対象は15年間に当科音声外来を受診した171例で, 音声外来新患総数の18%にあたった. 性別は男性69%, 女性31%で, 年齢は4歳から89歳 (平均58歳) であった. 両側性麻痺が18%, 片側性は82%で, 片側性の麻痺側は左が71%と多数を占めた. 麻痺の原因は術後性が59%と半数以上を占め, 当該手術の内訳では食道腫瘍手術, 甲状腺腫瘍手術が多くみられた. 経過観察中, 全症例の58%に音声改善が認められ, 疾患別では挿管性の予後が82%と最も良好であった. 全体で麻痺自体の軽快による音声改善と代償による音声改善の割合はほぼ同程度であった. 麻痺自体の軽快の大部分は1年以内にみられたが, 代償による音声の改善はそれ以降にも多くみられた. すなわち, 声帯麻痺症例に対する治療計画や患者への説明に際して, 麻痺の回復は発症後1年まで, 代償による音声改善はそれ以降にも期待できることを参考にすべきと思われた.

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© 2007 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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