抄録
cortisolに代表されるglucocorticoidは副腎皮質で合成されるホルモンであり, 糖, タンパク, 脂質などの代謝に関与する. 抗リウマチ作用が確認されて以来, 強力な抗炎症作用を有するglucocorticoidが合成され, 臨床応用されてきた. 炎症, アレルギー, 免疫反応を強力に抑制するが, 長期にわたって大量のglucocorticoidを使用すると生理的な作用が過度に発現する. 全身性副作用の発現を軽減するため, 吸収後には速やかに不活性化されるアンテドラッグの局所適用が進められている. アンテドラッグの開発は強力な作用をもつglucocorticoidをより安全に使用するための画期的な工夫である. glucocorticoidは細胞内にある受容体を介して種々の遺伝子の発現を高め, あるいは抑制することによって多様な生理作用および薬理作用を発現する. glucocorticoidによって活性化された受容体は転写調節因子として直接遺伝子発現を調節するのみならず, 核内の種々の因子との相互作用を介して遺伝子発現を制御する. glucocorticoid受容体は膨大な数の核内因子の中で, 複雑な相互作用を介して多数の遺伝子の発現を制御していると考えられる. glucocorticoidは受容体を活性化するのみと考えられてきたが, 作用発現機序の解明に伴い, 好ましい作用のみを発揮するglucocorticoidの創製の可能性が示唆されるようになってきた.