〔目的〕タラポルフィンナトリウム (NPe6) を用いた光線力学的診断 (PDD) が口腔咽頭癌にも応用可能であり, 光線力学的療法 (PDT) が有用であることを検討する.
〔対象と方法〕NPe6を用い, PDD併用でPDTを施行した口腔咽頭癌11例を検討した. T1が6例, T2が5例で, リンパ節転移, 遠隔転移のない例を対象とした. NPe6をPDDの4時間前に投与し, 全身麻酔下でPDDを施行した. 腫瘍から発する蛍光を観察後, マーキングを行い, その部位にPDTを施行した. PDT後にはフォトブリーチ現象を確認した. また, 腫瘍中心部とコントロールとしての腫瘍辺縁正常部の組織を採取し, NPe6の組織内濃度を検討した. NPe6の腫瘍内濃度と治療効果も検討した.
〔結果〕PDDは全例で施行され, 腫瘍進展範囲をマーキングできた. 蛍光範囲は肉眼的腫瘍部位よりやや大きく, 安全域を確保できた. PDT後, 全例でフォトブリーチ現象が確認できた. NPe6の腫瘍内濃度は1.57-6.84μg/gで, 腫瘍/正常組織比は2.32-5.69であった. 治療効果は全例でCRであった. 入院期間は放射線治療などと比べて著明に短縮された.
〔結論〕NPe6を用いたPDDは口腔咽頭癌にも応用可能で, より正確な範囲でPDTを行えた. NPe6は腫瘍組織に2倍以上多く残存した.
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