日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アレルギー性鼻炎に対する抗原特異的免疫 (減感作) 療法の現況
岡本 美孝
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2012 年 115 巻 11 号 p. 944-949

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抄録

アレルギー性鼻炎は, 患者数の増加と, 睡眠, 就業, 学業への影響から患者のQOL障害が強いことが特徴である. アレルギー性鼻炎の自然改善は少なく, 特に小児期に発症した場合には, 多くは改善がみられないまま成人に移行している. そのため, 根本的な対応が望まれており, 抗原特異的免疫療法 (減感作療法) に対する期待は大きい.
これまで抗原特異的免疫療法は皮下投与法で行われてきている. 免疫治療の意義は評価されているものの, 一方で長期の治療期間が必要で, 注射での投与のため40回以上の通院をする必要がある. また, 頻度は少ないとはいえ重い副作用の報告もある. 患者負担の大きさから, 免疫療法は有効性が示され, 国内外のガイドラインで推奨されているのにもかかわらず, 実際には実施する医療機関や受ける患者は減り続けている.
最近, 従来の抗原の皮下注射に替わる方法として抗原の舌下投与が期待されている. 舌裏面に抗原の保存をはかり, 口腔底粘膜を利用した粘膜投与であり, 医師の指導下ではあるが自宅での投与が可能であり, 重篤な副作用の減少から患者の負担が著しく軽減されるものとして注目され欧州では広く実施されている. 国内でもスギ花粉症に対して, 舌下免疫療法の二重盲検による臨床治験が開始され, その結果が注目されている. 一方, ダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対しても, 海外からの輸入抗原を用いた臨床治験が開始されている. 今後, 抗原特異的免疫療法はアレルギー性鼻炎の標準治療となることが期待されるが, 適応, 効果の評価をきちんと行うことが必要であり, 治療の中心となる耳鼻咽喉科医の役割は大きい.

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© 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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