日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
長引く咳への対応
檜澤 伸之
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2014 年 117 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

咳嗽は呼吸器疾患の日常診療では最も頻度が高い症候の一つである. 肺炎, 肺がん, 間質性肺炎や喘息, COPDなどの疾患がないことを確認した上で, 慢性咳嗽の原因疾患を考えていく. 身体所見や胸部X線写真, 呼吸機能検査で異常を伴わずに長期に続く咳嗽は, 原因疾患が曖昧なまま漫然と鎮咳薬, 抗炎症薬や抗生剤が投与され, 咳嗽によって生活の質が著しく低下したままで放置されてしまう危険があり, 適切な対応が求められる.
咳嗽は本来, 感染などによって気道内に貯留した分泌物や吸入された外来異物を気道外に排出させるための生体防御反応である. しかしながら, 8週間以上続く慢性咳嗽においては, 感冒を含む気道の感染症に対する生体防御が主体となることは少ない. 喘息/咳喘息, アトピー咳嗽/非喘息性好酸球性気管支炎, 副鼻腔気管支症候群/上気道咳症候群, さらには胃食道逆流などが慢性咳嗽の主要な原因疾患と考えられている. また, 長引く咳を呈する感染症としては, 線毛上皮細胞に感染するマイコプラズマおよび百日咳を考慮する.
日常の臨床では, これらの疾患を念頭に置いて詳細な病歴聴取を行い, 基本的な検査を進めていく. それぞれの病態に特異的な治療を実施し, 効果判定を行った上で治療内容の変更や増減を行う. しかしながら, これらの治療によっても軽快しない難治性の慢性咳嗽が存在し, その割合は20~40%ともいわれ, 中枢性の咳感受性亢進が難治性の慢性咳嗽に一定の役割を果たしている可能性が指摘されている. 難治症例においては咳嗽の原因に対する治療だけではなく, 亢進した咳嗽反射に対する非特異的な治療も重要になってくる. 慢性咳嗽の診療を支援する目的で日本呼吸器学会は咳嗽に関するガイドラインを作成している. 本稿では, 難治性の症例に対するアプローチなど, 慢性咳嗽を取り巻く最新の話題を, 最近改訂されたガイドラインの内容も踏まえながら概説したい.

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© 2014 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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