抄録
(背景) 頸動脈超音波検査が頸動脈の評価や動脈硬化のスクリーニングのため, 本邦で広く行われている. その際, 甲状腺病変やリンパ節腫脹がみられることがある. しかし, それらの病変に対し, 十分な注意が払われていない可能性がある.
(対象・方法) 2008年から2012年まで当院で同検査を行った30,351名を対象とした. 頸動脈の評価に加えて甲状腺と頸部リンパ節腫脹を観察した. 要精査判定基準は甲状腺内に ①石灰化を伴う腫瘤, ②2cm以上の充実性腫瘤, ③悪性所見, ④びまん性腫大, さらに⑤頸部リンパ節腫脹とした.
(結果) 30,351名中650例 (2.2%) が要精査となり, その内当院で精査した症例は394例であった. 悪性腫瘍が73例 (全体の0.24%) 発見され, その内訳は甲状腺癌67例, 悪性リンパ腫2例, 喉頭癌1例, 中咽頭癌1例, 下咽頭癌1例などであった. 要精査所見において650例中甲状腺内に石灰化腫瘤が370例 (56.8%), 2cm以上が197例 (30.2%), 悪性所見が120例 (18.4%), びまん性腫大が38例 (5.8%), 頸部リンパ節腫脹が38例 (5.8%) にみられた. 同検査で発見された甲状腺癌56例の要精査所見は良性病変132例と比較し, 有意に悪性所見とリンパ節腫脹の割合が高かった. 甲状腺癌手術例において同検査で発見された56例は症状を自覚し, 診断した21例と比較し, 有意に腫瘍径が小さく, pT, pN 分類で早期であった.
(結論) 頸動脈超音波検査で甲状腺と頸部リンパ節腫脹をスクリーニングすることは甲状腺癌の早期発見に有用と考えられた.