日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
耳管開放症の診断と治療
―特に手術について―
大島 猛史
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2016 年 119 巻 11 号 p. 1366-1372

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抄録

 耳管開放症の診断のポイントは, ① 3症状, ② 体位による症状の変化, ③ 他覚的所見をとらえること, の3点である. 3症状とは, 自声強聴, 自己呼吸音聴取, 耳閉感であり, これらがあると耳管開放症を疑う. さらに, これら症状が体位により変化することが診断上の重要なポイントとなる. これらに加え, 鼓膜の呼吸性動揺, 話声の聴取, 耳管機能検査の陽性所見などの他覚的所見をとらえることができれば確定診断となる. 特に鼓膜の呼吸性動揺は特殊な検査装置が不要で, 日常診療で容易に確認することができる. 他覚的所見としては最も重要である.
 鼻すすり癖を有する耳管開放症患者は少なくない. 耳管開放症の鼻すすりは鼻閉などの鼻症状に対して行うのではなく, 不快な耳症状を解消するための行為である. 鼻すすり癖により耳管開放症は変貌するため診断が難しくなる. 自声強聴などの開放症状が不明瞭となり, 主訴が聴覚過敏となることがある. さらに体位による症状の変化が問診で得られにくくなる. 鼻すすり癖は中耳疾患の危険因子ともなるので, 早期に診断し対処する.
 耳管開放症の治療は保存的治療が原則である. まず, 患者に疾患を理解させ不安を解消させることが必須であり, 中にはこれだけでコントロールすることができる例もある. しかし, 保存的治療で効果が得られない重症例は外科的治療の適応となる. さまざまな手術が試みられているが当科では耳管ピン挿入術を第一選択の手術療法として行っている. 約80%の症例に効果を認めているが, 鼓膜穿孔の残存, 滲出性中耳炎などの合併症もある. ピンのサイズは複数あり, 適切なサイズを選択しないと十分な治療効果が得られない. 安易に行うのではなく, 適応を慎重に判断しなければならない.

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© 2016 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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